スジクワガタの成虫の飼育方法(飼い方)を中心に解説します。飼育に必要なものや飼育する上での注意点,飼育環境,エサについて解説します。また、繁殖方法の概要についても簡単に説明します。
スジクワガタはやや標高の高い場所に生息するため、暑さは苦手のようである。理想は25℃以下かもしれませんが、30℃くらいでも特に問題なく生存していました。直射日光が当たらない涼しい場所で飼育するのがよい。また、昼間は明るく夜は暗い場所の方がよい。
単独飼育の場合は小さなケースで問題ありません。スジクワガタは基本的に隠れる場所とエサがあれば大きな移動はしないため、狭くてもあまり問題はありません。スジクワガタの場合、25cm×15cm以上の大きめの飼育ケースでまとめて飼育することもできなくはないですが、オス同士は少なからずケンカをするため、まとめ飼いをすると脚やフ節(脚の先端にある爪の部分)が取れたりする可能性があります。なお、フ節が取れると、交尾や産卵が正常に行えないといった弊害が出る可能性があります。そのため、まとめて飼育する場合は、大きめの飼育ケースを使用する,エサを多めに入れる,隠れる場所を多く作る、などの対策が必要になります。スジクワガタのオスはメスを殺してしまうことは通常ないため、常時オスとメスを同じ飼育ケースで飼育しても問題ありません。なお、成虫は飛ぶ場合があるため、蓋のできるケースを使用し、蓋をしてください。
飼育ケースに湿らせたマットを5cm程度入れます。マットの湿り具合は、強く握った時にマットが固まるくらいがよい。強く握った時に水が出てくる場合は、水分が多すぎである。クワガタムシは体が平らなため、1回ひっくり返るとなかなか起き上がることができません。そのため、ひっくり返ったときに足を引っかけて起き上がれるように、直径2~5cm程度の木の棒を入れておきます。エサは昆虫用ゼリーが便利です。
マットが乾燥してきたら霧吹きなどで湿らせます。また、エサがなくなったり腐ってきた場合は、新しいものと交換します。昆虫マットも劣化するため、劣化した場合は交換します。マットが劣化するとパウダー状になったりドロドロになったりします。そのような場合はマットを新しいものと交換します。
スジクワガタの成虫は複数年生きるため冬季は冬眠をします。気温が下がってくる10~11月頃から冬眠に入ります。10月頃になれば冬眠の準備をします。飼育ケースにマットを5cm程度またはそれ以上入れます。なお、通常からマットを5cm以上入れているのであれば冬眠の準備は特に必要ありません。冬眠に入るまではエサを入れておきます。マットに潜ったままになり、活動をしなくなれば冬眠に入っていますのでエサは不要となります。冬眠中は暖房などを使わない1日の気温の変化が小さく、直射日光の当たらない室内に置きます。0℃を下回らなければ寒さで死ぬことはまずなく、室内であれば冬の寒さで死ぬことはまずないと思ってよい。冬眠中もマットが乾燥してきた場合は霧吹き等で湿らせるようにします。マットが乾燥したままになると、越冬できずに死亡する場合があります。
気温が上がってくる4月下旬~5月頃から冬眠から目覚める個体が出始めます。この時期になればエサを入れるようにします。なお、飼育環境や地域により時期は変動しますので目安程度と思ってください。4月以降でマットから出てきて活動するようになった時点でエサを入れるというので十分かと思います。
産卵の前に、まずは交尾をさせないといけません。スジクワガタは羽化してすぐには繁殖できません。羽化後最低3ヶ月が経過しなければ、繁殖はできません。理想は羽化してから一度越冬している個体となります。また、エサをたくさん食べているかも重要です。交尾させるには、羽化後3ヶ月以上が経過し、エサをたくさん食べている個体が必要です。エサ不足の場合、栄養不足で産卵しない場合があります。交尾をさせるときは、オスの飼育ケースにメスを入れます。オスとメスが必ず出会えるように小さめの飼育ケースを使います。この状態で1週間程度同居させます。一般的に、1週間たてば、交尾を確認できなくても、交尾しているものと判断して問題ないようです。交尾をさせる時期はスジクワガタの活動が活発になる6~8月が適しています。なお、まとめて飼育している場合は、オスとメスがいればすでに交尾済みと判断して問題ありません。なお、野外で採集したメス個体はすでに交尾済みの場合もあるため、交尾をさせなくても産卵する場合があります。
産卵用ケースは縦15cm,横25cm,高さ15cm以上のものを使います。スジクワガタは、朽木(産卵木)に産卵するそうなので、朽木が必要となります。朽木はある程度太いものを使用するのがいいでしょう。よく朽ちていて、芯のないものが理想的です。爪で押すと爪の跡が残る程度のものが適しています。朽木はマットに埋める前に6~24時間程度水につけておき、よく水をしみこませます。その後、皮を剥いで皮と朽木の間にある粉の層も取り除いてからマットに埋めます。飼育ケースに湿らせた昆虫マットを底から5cm程度やや硬めに詰めます。そこに朽木を置き、朽木の半分程度が埋まるまでクヌギマットを入れます。このとき、クヌギマットをやや硬めに詰めて、朽木が動かないようにします。最後にエサと直径数cmの木の棒と交尾済みのメスのみを入れます。しばらくすると、朽木からカビが生えることが多いですが、特に問題はありません。マットや朽木が乾燥してくると、霧吹きなどで湿らせます。
まとめて飼育している場合、その飼育ケースで産卵セットを組んでもいいですが、他の個体が邪魔になったりしてあまり産卵しないものと思われます。そのため、別のケースで産卵セットを組み、メス1匹だけを入れる方がよいでしょう。産卵用ケースにメスを入れてから1ヶ月後程度経過すると、メスを元の飼育ケースに戻します。夜間にエサを食べるためにマットの上に出てきたところを捕まえるとよい。メスを捕まえるために産卵用ケースのマットをひっくり返したりしてはいけません。そのままメスを入れておいてもあまり問題はないかもしれませんが、メスが朽木(産卵木)からマットに出てきた幼虫をつぶしたりしてしまう可能性もあるため、メスは取り除いた方がいいでしょう。
なお、比較的涼しい環境を好むため、気温が高いと産卵しないかもしれません。エアコンなどで温度調節ができる場合は、25℃以下がよいでしょう。温度調節ができない場合は、涼しくなってくる9月頃に産卵させると産卵するかもしれません。