ヒラタクワガタの幼虫飼育方法

概要

ヒラタクワガタ(本土ヒラタクワガタ)の幼虫の飼育方法(飼い方)を解説します。飼育に必要なものや飼育する上で注意すること,飼育環境,マットの交換等について解説します。また、サナギと羽化後の成虫の扱いについても解説します。

飼育に必要な物

飼育環境

飼育場所は、直射日光が当たらず、30℃を超えない室内がよい。明暗はあまり関係なく、1日中暗い場所でも問題ありません。冬季は幼虫に冬の寒さを感じさせる必要があり、室温が18℃程度以下の場所に置く必要があります。気温が0℃を下回らなければ寒さで死ぬことはまずないと考えてよいため、室内で飼育すれば寒さは特に問題になりません。暖房を使用しない気温の変化が少ない1階の涼しい場所で飼育するのがよい。

飼育方法

卵の孵化後2週間~1ヶ月程度を目安に割り出しを行い、幼虫を1匹ずつ瓶で飼育します。瓶に湿らせたマットを9分目~ほぼ満タンに詰めます。詰めるときの硬さは、やや硬めくらいでいいかと思います。マットは軽く握って固まる程度、強く握るとわずかに水分が出てきているように感じる程度に湿らせます。これよりもやや水分が多めでも問題ないようですが、マットの劣化が早くなる場合があります。マットを強く握って水が出てくる(水が垂れてくる)場合は水分が多すぎである。使用するマットは、クヌギマットなどの広葉樹のマットで幼虫用と書いてあるものを使用します。大きな成虫を羽化させるには発酵マットと呼ばれる高栄養のマットが必要になります。また、マットは粗すぎないものがよい。幼虫が小さいときは篩で細かいマットを分離し、細かいマットを詰めるほうがいいようです。または、あらかじめ細かめのマットを選ぶとよいでしょう。

幼虫の飼育に使うマットは新鮮なものを使用するようにします。産卵セットに使ったマットを再利用するといった古いマットを使用すると、古いマットは劣化したマットであることからエサに適さないと幼虫が判断し、早く成虫になろうとするためか、特にメスの幼虫が秋にサナギになってしまい大きな成虫にならない場合があります。

マットを詰め終われば、中に幼虫を入れます。幼虫を入れるときは、マットに穴をあけ、その中に幼虫を入れて、上からマットをかけます。その後、フタをします。フタを完全に閉めてしまうと、空気の通りがなくなってしまい、酸欠になったり熱がこもって幼虫が死亡する場合があります。そのため、フタは載せるだけにするか、フタを閉める場合はフタに穴をあけて空気の通り道を確保する必要があります。フタを載せた状態であれば、マットはほとんど乾燥しないため、霧吹きで湿らせるといった作業は基本的に不要である。マットが乾燥する前にマット交換を行う時期が来ます。なお、ビンやボトルのフタを載せているだけであれば幼虫の脱走に注意が必要です。特に気温が上昇する春から初夏にかけて幼虫が暴れた際に、フタを押しのけて脱走する場合があります。そのため、フタの上に重さ250g程度の物体を載せておくとよい。

幼虫がマットの上に出てきている場合は、酸欠やマットが発酵して熱を出している,マットを食べつくした,マットが劣化している,マットが乾燥しすぎている、といったことが原因として考えられます。

マット交換は、糞が目立ってきたら交換します。慣れるまでは少しわかりにくいかもしれませんが、マットを食べた部分は食べていない部分に比べてマットが細かくなっており、大部分がこのようになった場合にマットを交換します。目安としては2~3ヶ月に1回交換すればいいかと思います。マットを交換する場合は、瓶をたたいてマットを出すと、その衝撃で幼虫が死亡する場合があります。そのため、幼虫に注意しながらマットを瓶から掻き出すようにして取り出すようにします。マットの交換が終われば、瓶に詰めたマットに穴あけ、その中に幼虫を入れると自分で潜っていきます。

マットにダニなどが発生している場合は、ビンを洗った上でマットを全て交換するほうがいいかと思います。ダニは幼虫にもついている場合があるため、幼虫についているダニも取り除くようにします。また、マットが劣化してきた場合も交換が必要である。一般的にはマットが劣化するとドロドロになります。そのような場合はマットを交換します。

サナギ

十分に成長した幼虫は、常温飼育の場合は、5月~6月頃に卵型の蛹室を作り、その中でサナギになります。また、9~10月頃にサナギになる個体もいます。なお、早い場合は5月上旬~下旬に蛹室を作る場合もあります。一般的に、瓶の真ん中より下側で、瓶の壁に沿って蛹室を作ることが多いです。そのため、観察が非常にしやすいのが特徴です。ただ、瓶に沿って作らない場合もあり、この場合は観察がしにくくて困ります。蛹室を作り始めた場合は、マットの交換は行わないようにします。蛹室を作り終えると、幼虫は徐々にシワシワになってきますが、死んでいるわけではないのでご注意ください。この状態の幼虫は前蛹といい、やがてサナギになります。サナギになるとオスにはすでに大顎があり、オスとメスの判別が容易に出来ます。

サナギは衝撃に弱いため、強い衝撃を与えないようにしてください。サナギは、お尻を動かして運動を行います。この運動を行うことで、羽化不全にならないようにしているとされています。羽化が近づくと、脚や頭などの部分が赤っぽくなります。

羽化

気温によって異なりますが、サナギになってから3~4週間ほどで羽化します。羽化直後は赤っぽい色をしていますが、時間とともに黒くなっていきます。蛹室の中で、ひっくり返ったりしている場合がありますが、体を乾燥させているためであり、死んでいるわけではないのでご注意ください。羽化直後は衝撃に弱いため、強い衝撃を与えないようにしてください。

羽化後、1ヶ月ほどすると体も十分乾燥し、体色も黒くなります。羽化後1ヶ月たてば、取り出しても問題ありません。蛹室を脱出して活動を開始したら、その時点で取り出して問題ありません。羽化後1ヶ月で取り出した場合、すぐにはエサを食べない場合がほとんどで、ヒラタクワガタの場合は活動開始後1~2ヶ月程度は全くエサを食べない場合もあります。なお、一時的に活動をしても、エサを食べ始めるまではほとんどマットに潜ったままでほとんど活動をしないという場合もあります。この間は幼虫期間に蓄えた栄養分があるため餓死するといったことはありません。ただし、いつエサを食べ始めても問題ないように、エサは常に入れておいた方がいいでしょう。なお、羽化後に取り出しても再びマットに潜ったままで休眠する場合もあります。7月頃に羽化した個体であれば、10月上旬頃に掘り出すとこれがきっかけとなって活動を開始し、エサを食べるようになる場合があります。越冬前にエサを食べさせておきたい場合はこの方法を使うとエサを食べるかもしれません。

ヒラタクワガタの場合、常温で飼育すると6月下旬~7月下旬の初夏に羽化するパターンが主流であり、一部の個体は9~10月の秋に羽化します。初夏に羽化した成虫に関しては、羽化後1ヶ月くらい経過すれば取り出しても問題ありません。秋に羽化した場合は、羽化後1ヶ月経過してもそのままにしておいても問題はありません。ただし、マットが劣化してきた場合は取り出して成虫を飼育するケースに移動させます。特に問題がない場合は、越冬後の翌年5~6月または蛹室を脱出して活動を開始した時点で取り出すのがよいでしょう。

関連項目