発酵マットの作り方

概要

クワガタムシやカブトムシの幼虫を飼育する際に使用する発酵マットの作り方を解説します。ここでは、小麦粉を使った発酵マット(二次発酵マット)の作り方(自作方法)について解説します。発酵マットを作ることができる時期や温度(気温),準備物,手順,注意点,作った発酵マットの保管方法について解説します。

時期

発酵マットを作るにはある程度の気温(室温)が必要で、気温(室温)が低すぎると発酵しません。当研究所では最高気温(室温)30度以上、最低気温(室温)25度以上が必要であると考えています。当研究所においては2階の直射日光が入る場所で作成しており、6月上旬~10月初頭がこの基準を満たす時期(ただし、6月と9月下旬~10月初頭は窓を閉め切って暑くなるようにしている)となります。しかし、環境等によりこの時期であってもうまく発酵しない場合もあるため、安定して気温が高くなる時期(梅雨明け後~8月下旬)に作るのが好ましい。なお、加温等によりこの基準をクリアできる場合は、時期に関係なく作ることができます。

とにかく暑いほうがよく発酵するため、直射日光が入り、かつ、窓を開けない場所のように熱がこもるような場所や冷房を使わない場所、2階のように昼間を中心に暑くなる場所が適しています。

特に暑くなる梅雨明け後~8月中旬頃は、発酵するとかなりの高温になり、体感では50度以上になります。気温(室温)がやや低くなる7月上旬や9月下旬では比較的穏やかに発酵するため、体感で40度弱(少し温かいと感じる程度)にしかなりません。

準備物

マットが十分に(50リットル程度)入る大きさの耐熱性(体感で最高温度50度以上になる)のあるケース(密閉はできなくてもよいが、フタはあった方がよい),未発酵(一次発酵)のクヌギマット,薄力粉の小麦粉,水です。

当研究所では10リットル400円~500円程度の未発酵(一次発酵)のクヌギマット5袋(1袋10リットル、計50リットル)に対し、薄力粉の小麦粉1kgを混ぜています。水はマットの湿り具合などによりますが2~3リットル程度を様子を見ながら加えています。ケースには60cm水槽を使用し、それに適当なものを乗せて蓋としています。これで一度に50リットルの発酵マットを作ることができます。なお、大きなケースでまとめて作る方が発酵時の温度が安定し失敗が少ないようである。

手順

発酵マットの作り方は、ケースに入れたマット50リットル程度に対し薄力粉の小麦粉1kgの割合で混ぜます。なお、マットはケースに満タンまで入れるとマットを混ぜることができなくなります。そのため、満タンの状態よりも7~10cmくらい下まで入れるようにします。そして、マットに水を加える前に小麦粉を混ぜます。このとき、小麦粉が均等に散らばるようによくかき混ぜます。小麦粉は水を加えると固まる性質があるため、マットに小麦粉を混ぜる前に水を混ぜると小麦粉が固まって混ぜにくくなります。なお、50リットルの発酵マットを作る場合で、マットを50リットル入れるとケースの満タンの状態よりも7~10cmくらい下までくる場合、マットを40リットル入れて小麦粉を混ぜてから残り10リットルを入れてもう1度混ぜる方が混ぜやすくてよい。

マットに小麦粉をむらなく混ぜたら、マットに水を入れます。水を入れすぎると発酵ではなく腐敗の道を歩むことになる場合があるため注意が必要です。水の量の目安としては、当研究所ではマット50リットルに対し水2~3リットルを加えていますが、マットの湿り具合などによって多少変動しますので、あくまで目安程度にしてください。水の量は多すぎるよりはやや少ない方が失敗しないようです。あともう少し水を混ぜた方がいいんじゃないかくらいで水を加えるのをやめた方がいいでしょう。水を加えたら均等になるようによくかき混ぜます。この時点で少し水が少ないくらいが安全かと思います。マットを軽く握っても固まらず、強く握らないと固まらないくらいであれば問題ありません。

あとは自然に発酵が始まります。発酵中はフタをしておく方が熱や水分が逃げにくく、また、ゴミなども入らなくてよい。発酵を順調に進めるために、1日~数日に1回、マット全体をよくかき混ぜます。マットは発酵によって高温になっていますので、手でかき混ぜる際は火傷などに注意してください。特に梅雨明け直後の7月下旬~8月上旬は気温も高いため特にマットが高温(熱くて混ぜられないくらいで、体感的には50℃以上)になります。マットをかき混ぜる際に、甘酸っぱいような匂いがすれば、発酵は順調に進んでいます。なお、発酵が始まるとマット内の水が蒸発します。フタをしている場合は、フタにかなりの量の水が付いているかと思います。これらの水はマットに戻して問題ありません。水の蒸発によりマットが仕込んだときよりも乾燥する場合がありますが、水分がなくなるほど乾燥していないのであれば追加で水を混ぜる必要は特にありません。

発酵自体は2週間程度で終わり、マットの温度も常温になります。その後、更に2~3週間程度寝かしておき、開始から4~5週間ほどで完成となります。使用する際はマットが冷めているかどうかの確認が必要です。マットが冷めていない場合はまだ発酵途中の可能性があるので、自然に冷めるのを待ってから使います。また、完成した発酵マットを使う際は、マット内のガス抜き(空気の入れ替え)を十分に行ってください。マットに水を加えると、再発酵が始まる場合もあるようなので、マットが温かくなってきた場合はすぐに使用を中止し、発酵が終わるまで待ってください。ちなみに、発酵が終わって冷めていれば、発酵終了後にマットの温度が常温になった後の寝かせる工程を省略して発酵開始後2週間程度で使っても特に問題はありません。未発酵(一次発酵)のマットは木の色(肌色っぽい色)をしていますが、発酵が終わったマットは茶色になります。また、匂いも未発酵(一次発酵)マットは木の匂いですが、発酵マットでは木の匂いが消えています。

保管

完成後は完全に乾燥させて保管することが好ましい。発酵マットを作った入れ物に入れたまま放置しておいたり、マットを乾燥させずに、または乾燥が不十分な状態で袋に入れて保管すると、マット内の水分によりマットの劣化が進行します。また、粘菌の発生やコバエの発生によりマットが劣化して使えなくなってしまう場合もあります。他にも、マットを乾燥させないとマットからカビが生える場合があります。特に、乾燥していないマットをフタをしたまま保管しておくと、ジメジメした状態になるため高確率でカビが生えます。ただし、カビの場合はマットの表面にしか生えないため被害はあまり大きくない印象です。また、状況次第では乾燥させてカビが消えた後に使用することができなくもない場合もあるほか、カビが生えたことによるマットの劣化があまりない場合もあります。

乾燥させるのが面倒な場合は、発酵マットを作った入れ物に入れたままにしておき、1ヶ月に1~2回程度マット全体をよくかき混ぜるだけでもマットの劣化をある程度抑えることができます。また、フタの一部をずらして置くと隙間から水分が出て行き、マットが乾燥していきます。1ヶ月に1~2回全体をよくかき混ぜることと、フタをずらして置くことを併用することで完全に乾燥させて保管する方法には劣りますが、マットの劣化を最小限に抑えることができます。なお、マットが乾燥したように見えても、マットをかき混ぜるのをやめて放置していると、マット下部に水分が集まってくる場合があります。そのままにしておくと水分が集まってきた場所にあるマットが劣化してしまうため、このような状態になった時はマットをよく掻き混ぜるようにします。

発酵マットを作成したケースのまま保管したい場合、発酵マットの作成開始を遅くとも9月上旬にし、9月下旬までに完成させると、完成後もまだ気温が高いためマット内の水分が蒸発しやすく乾燥させやすくなります。上記のフタをずらして置いておく方法と、1ヶ月に1~2回程度マット全体をよくかき混ぜる方法を併用すると、ほぼ全体を乾燥させることも可能となります。