ノコギリクワガタ(本土ノコギリクワガタ)の繁殖方法(産卵方法)を解説します。繁殖のために必要なことや交尾時の注意点,産卵セットの組み方(作り方)を解説します。また、産卵後の管理と割り出し(幼虫の取り出し)の方法についても解説します。
産卵の前に、まずは交尾をさせないといけません。ノコギリクワガタは基本的に前年の夏~秋に羽化して成虫になっているため、越冬後に活動を開始してエサをたくさん食べている成虫は繁殖することができます。なお、エサ不足の場合、栄養不足で産卵しない場合があります。
ノコギリクワガタの場合、長期間オスとメスを同居させても特に問題はないと思いますが、交尾の時期だけオスとメスを同居するという方がよりよいでしょう。交尾の時期だけオスとメスを同居させる場合は、オスの飼育ケースにメスを入れます。オスとメスが必ず出会えるように小さめの飼育ケースを使います。この状態で1週間程度同居させます。一般的に、1週間たてば交尾を確認できなくても、交尾しているものと判断して問題ないようです。交尾をするかどうか心配な場合は、同居期間を2~3週間と長めにとってもいいかもしれません。なお、オスの飼育ケースにメスを入れたときに、オスがメスを攻撃している場合は、速やかに別居させてください。また、同居させてから何日か経過してからオスがメスを攻撃している場合も、速やかに別居させてください。交尾をさせる時期はノコギリクワガタの活動が活発になる6~8月が適しています。産卵させる時期は、7月~8月中旬がよいが、常温飼育でも西日本の平野部であれば6月中旬以降や9月中旬までであれば産卵させることができます。これ以外の時期では気温が低すぎて産卵しないかもしれません。
なお、野外で採集したメス個体はすでに交尾済みの場合もあるため、交尾をさせなくても産卵する場合があります。
産卵用ケースは縦15cm,横25cm,高さ15cm以上のものを使います。普通のクヌギマット(幼虫用と書いてある昆虫マット)でも産卵するかもしれませんが、発酵マットの方が適しています。クヌギマットを使用している場合でマットに産卵しない場合は発酵マットに換えると産卵するかもしれません。また、マットは細かめの方がいいようです。下から数cm程度は堅めにマットを詰めます。このとき、飼育ケースを割ったりして壊さないように注意してください。さらにその上に10~15cm程度の湿らせたマットを軽く詰めます。最後にエサと直径数cmの木の棒と交尾済みのメスのみを入れます。マットが乾燥してくると、霧吹きなどで湿らせます。産卵はケース底面や側面付近のマット内で行われることが多いため、産卵していると卵が見えることが多い。なお、ノコギリワガタのメスは、幼虫が育つことができると判断した環境でしか産卵しないため、飼育ケースが狭かったりマットの量が少なかったり乾燥気味だったりすると産卵しない場合があります。
ノコギリクワガタの場合は、朽木(産卵木)はなくても産卵するため、朽木はなくても問題ありません。なお、朽木を使用する場合は、飼育ケースの底から数cm程度まで湿らせた昆虫マットを堅く詰めて、その上に5cm程度の昆虫マット(幼虫用と書いてあるもの、または発酵マット)をやや硬めに詰めます。そこに朽木を置き、朽木の3分の2程度が埋まるまでマットを入れます。このとき、マットをやや硬めに詰めて、朽木が動かないようにします。朽木は直径7cm程度以上のものを使用します。よく朽ちていて、芯のないものが理想的です。爪を立てて力を入れると爪の跡が残る程度のものが適しています。朽木が細い場合や状態が良くない朽木の場合は産卵しない場合があります。朽木はマットに埋める前に6~12時間程度水につけておき、よく水をしみこませます。その後、皮を剥いで皮と朽木の間にある粉の層も取り除いてからマットに埋めます。最後にエサと直径数cmの木の棒と交尾済みのメスのみを入れます。産卵セットにメスを入れる場合、産卵に集中できるように1匹だけを入れるようにします。しばらく日数が経過すると、朽木からカビが生えることが多いですが、特に問題はありません。カビを除去したりする必要もありません。マットや朽木が乾燥してくると、霧吹きなどで湿らせます。
産卵開始までに時間がかかることがあり、メスを産卵セットに入れてから産卵を開始するまでに1~3週間程度かかる場合があります。産卵しなくても気長に待つ必要があります。産卵していることが確認できたら夜間にエサを食べるためにマットの上に出てきたところを捕まえてメスを撤去します。メスを捕まえるために産卵用ケースのマットをひっくり返したりしてはいけません。そのままメスを入れておくと、メスが卵や幼虫をつぶしたりしてしまう場合があるため、メスを取り除く必要があります。メスを取り除いた後は、マットなどが乾燥してきたら霧吹き等で湿らせます。
幼虫が1令後期~2令初期まで成長した段階で割り出しを行います。気温が高い7月や8月では、卵は約2週間で孵化します。発酵マットを使用した場合は、1令幼虫の期間は約2週間のため、メスを取り除いて1ヶ月後くらいが割り出しの時期となります。なお、朽木を使っている場合、朽木は栄養価が高くないため、朽木の中にいる幼虫の成長速度が遅くなるため、1令幼虫の期間は2週間より長くなるものと思われます。よって、この場合は割り出しを少し遅めに行うようにします。
9月に産卵させた場合、気温が低くなっているために孵化までに1ヶ月程度かかる場合があります。また、孵化後の成長も遅くなるため1令幼虫の期間も長くなります。そのため、メスと取り除いてから2ヶ月以上経過してから割り出す方がよい。産卵がうまくいっている場合は、ケースの底面を中心に幼虫が見えるはずです。そのため、幼虫がある程度成長したことを確認してから割り出すとよい。
朽木(産卵木)を使用せずマットのみの場合は、大きな入れ物に産卵用ケースをひっくり返して中にいる幼虫を取り出します。朽木(産卵木)を使用している場合は、マットの中にいる幼虫に加えて、朽木(産卵木)を割って中にいる幼虫を取り出します。朽木(産卵木)を割るときは、マイナスドライバーなどを使って中にいる幼虫をつぶさないように注意しながら取り出します。場合によっては朽木(産卵木)が非常に柔らかい状態になっていることがあり、その場合は手で簡単に割ることができるため、手で割るとよいかと思います。なお、ケースの角はマットが残りやすく、この中に幼虫が入っていることがあるため、マットを取るときは注意が必要である。そのまま指で取ると幼虫をつぶしてしまう場合があるため、ケースを軽くたたきマットが自然にはがれおちるようにします。取り出した幼虫はマットを入れた瓶で1匹ずつ飼育します。詳細はノコギリクワガタの幼虫の飼育方法をお読みください。
割り出し後はマットをケースに戻して保管しておきます。幼虫が小さくて見落としなどがある可能性があるため、1~3ヶ月後にマットに幼虫がいないかの確認をします。朽木(産卵木)を使用した場合は、割った朽木(産卵木)をマットに埋めて保管しておき、1~3ヶ月後に再度幼虫がいないかどうかの確認を行います。これでも心配な人は、さらに1ヶ月後程度にもう1度確認するという方法もあります。