淡水魚(川魚)の稚魚の飼育方法全般について解説します。淡水魚(川魚)の稚魚を飼育する際に必要なものや飼育環境,エサ,エサのやり方,水換えの方法などについて解説します。なお、このページで解説しているものは、当研究所で初めて飼育する種類の魚の稚魚の場合に使う方法でもあり、雑食性の魚の稚魚であれば一応飼育できる方法となります。
稚魚を飼育することは成魚を飼育するよりも難しい。その理由の1つとしては、稚魚は小さく弱いため網ですくうことができず、水質が悪化した場合でも成魚を飼育しているときのように水槽の水を全て取り換えるといった大掛かりな水換えができないためである。そのため、可能な限り水を汚さないようにする必要があります。よって、飼育ケースは水がたくさん入れることのできる大きめのものを使う方がよい。稚魚は体の大きさが小さいため、飼育ケースも小さくてよいと思いがちであるが、水の量が多い方が水質が安定するため、大きめの飼育ケースを使用するのがよい。
具体的には、水が10リットル以上入るものがよい。底に砂利を10mm程度敷くと、砂利がバクテリアの生息地になり水質が安定します。また、水草を入れると水草が光合成を行い酸素を放出するため酸素補給になります。加えて、水草の葉の表面などから生える藻類は、稚魚の補助的なエサになるため水草を入れておいた方がよい。稚魚は物理的な衝撃に弱いため、エアーポンプやフィルターを使うと、稚魚が吸い込まれたり泡の影響で奇形になる可能性があるためあまり推奨できません。このことから、水草を入れて酸素を補給する方法は有効である。多少個体数が多くても、極端に多くの個体を入れていなければ酸欠で稚魚が死ぬことは基本的にありません。
飼育は室内でも昼間は光が入って非常に明るい場所であれば問題ありませんが、薄暗い場所は飼育には適しません。しかし、日当たりのよい場所や直射日光が当たらなくても日光が入ってきて非常に明るい場所で飼育することが基本となるため、夏場は水温上昇に注意が必要である。水温が上がりすぎると、暑さで稚魚が死んでしまいます。
飼育モデルは、10リットル以上の容積のある飼育ケース(水槽)の底に5~10mmくらい砂利を敷きます。水を10リットル以上入れ、水草を入れます。水草は長さ15~20cm程度のものを数本入れればよい。水草はオオカナダモなどのように丈夫で砂利に植えなくても育つものがよい。また、屋外で飼育するといろいろな微生物が自然に発生し、これらの微生物が水質を安定させたり、稚魚のエサになったりするため飼育環境としては好ましい。これらの作業は遅くとも稚魚を入れる1週間程度前にしておき、稚魚を入れるころには飼育ケース内に藻類等の微生物が増えた状態にしておきます。このような環境下では、孵化2週間後程度まではエサを与えなくても問題ない場合が多い。
孵化直後の稚魚は、エサを与えても食べているかどうかわからない程度の量しか食べません。そのため、孵化2週間後くらいまでは飼育ケース内に発生した微生物や藻類をエサとし、人工飼料などのエサを与えないか、与える場合も補助的にエサを与えるとよい。稚魚は口が小さいため、稚魚用のエサを与えるか、普通のエサ(成魚用のエサ)を細かくすりつぶして与えればよい。あくまでこの時点ではエサは補助的なものであり、飼育ケース内に発生した微生物をエサのメインとします。ある程度大きくなり稚魚が進んで人工飼料を食べるようになれば、これをメインのエサとすればよい。
孵化後1ヶ月程度が経過し稚魚が少し成長して水換えができるようになった場合や、稚魚の個体数が少ない場合は状況に応じて水換えを行います。水換えは水の表面に油が浮いてきた場合や水が汚れてきて透明度が低下したときに行います。小さめのケースで浮いている油を掬うようにして水をとります。掬った水を捨てる際に、稚魚を一緒に流さないように注意します。
稚魚が中層や底層を泳いでいる場合は、飼育ケースの水の半分程度であれば特に苦労せずに抜くことができるかと思います。水を掬う際に稚魚が入ってしまうなど、半分以上水を抜くことが困難な場合は、1回の水換えで換える量を飼育ケースの半分にします。半分にこだわる必要はなく、3分の1のように半分より少ない量の水しか抜けなかった場合でも、それ以上水を抜くことが困難な場合は3分の1の水を換えるというので問題ありません。
稚魚が表層を泳いでいるために水をすくい取るのが困難な場合は、排水ポンプ(クリーナーポンプ)の吸水口に稚魚が吸い込まれないように非常に目の細かい網などを取り付けて水を抜くという方法もあります。ただし、稚魚が吸い込まれないほど目が細かい網を使用するため、網がゴミや稚魚の糞によって目詰まりしてしまいます。そのため、水を抜く間に数回洗って目詰まりを解消する必要があります。また、この方法においても、どうしても稚魚が吸水口に吸い寄せられてしまうため、これによりショック等による稚魚の死亡などはある程度は避けられないと思われます。排水ポンプ(クリーナーポンプ)を使用する場合は、1回の水換えで全体の半分~10分の9程度を換えればよい。
飼育ケースの側面が汚れている場合は水を抜いた時に掃除するとよい。水を抜いた後は、新しい水を追加してもとの量に戻せば完了となります。新しい水は必ず塩素(カルキ)を抜いたものを使用します。なお、新しい水を入れる際は、稚魚に負担をかけないようにするため、勢いよく水を入れずに強い水流が発生しないようにそっと水を入れるようにします。
屋外で飼育している場合は、夏期は藻類が増えすぎて水が緑色になってしまう場合があります。藻類が増えすぎて水が緑色になった場合は、藻類の光合成により水中の酸素が多すぎる状態となる場合があり、これが原因で稚魚が死亡する場合があります。そのため、そのまま放置せずに緑色になってきた時点で水換えをするほうが稚魚の死亡率を下げることができます。
一般的に淡水魚(川魚)の繁殖は春から初夏にかけてである場合が多いため、孵化した年の秋の9月~10月には稚魚はある程度大きくなっていて、網ですくって移動させても問題ない程度には成長している場合がほとんどです。この頃になると室内で飼育するようにします。そのまま屋外で飼育すると秋や(孵化の翌年に当たる)春は1日の気温変動が大く、それに伴って水温の変動も大きくなる場合があります。このような状況では魚が死亡する場合があるため注意が必要です。