シロヒレタビラの繁殖方法

概要

タナゴの一種のシロヒレタビラについて繁殖方法の1つである人工授精の方法について解説します。人工授精をするために準備をすることや必要なこと,注意点などについて解説します。また、卵や孵化した仔魚,稚魚浮上期の管理方法についても解説します。

繁殖の方法について

シロヒレタビラの繁殖方法(産卵方法)には、ドブガイなどの二枚貝に自然に産卵させる方法と、人工授精をする方法があります。二枚貝は飼育が難しく、長期間生かしておくことがなかなかできません。屋外に広い飼育ケースを置き、自然環境下に近い環境を保つことができれば、長期間飼育することも可能かもしれません。二枚貝を使ったからといって水槽の中で繁殖するかはわかりません。なお、シロヒレタビラをはじめとする春産卵型のタナゴ類は、産卵してから稚魚が泳ぎ出すまでに2~4週間程度かかります。そのため、比較的長期間の管理が必要となります。

繁殖の準備

繁殖させるためには、繁殖期になる前からエサを十分に与える必要があります。エサが足らないと卵に栄養がまわらず、産卵しなかったり産卵しても卵が孵化しなかったり孵化してもうまく育たなかったりという可能性があります。

水温は冬季は低い状態を維持し、春が近づくにつれて水温が高くなるようにします。日長時間も冬季は短く、春になるにつれて長くなるようにします。日長時間とは昼間の明るい時間のことであり、太陽光や蛍光灯などの光を当てなくても明るければ特に問題ありません。これらについては管理が面倒かもしれませんが、室内の1階で冷暖房を使わない場所であれば水温の変動は小さく、また、自然に近い環境になります。また、日長時間に関しても昼間は明るく夜は電気をつけない場所であれば、自然環境下の日長時間とほぼ同じにすることができます。そのため、1階で昼間は明るく夜間に人が活動しない場所で飼育すれば特に気にしなくても問題ありません。

人工授精の方法

繁殖期は主に4月~7月で、4月下旬~7月上旬が最盛期である。この時期になるとオスには婚姻色が現れ、メスには産卵管が出てきます。人工授精を行うには婚姻色がよく現れたオスと、産卵管がよく伸びたメスが必要となります。メスは繁殖期は常に産卵管が出ていますが、産卵する日になると産卵管が長くなり、尾鰭に届くくらいの長さになります。また、通常は灰色っぽい産卵管が、産卵する日には白っぽくなることが多いようです。なお、メスの産卵管は産卵する日の前日の夕方~夜くらいから徐々に長くなっていくようです。

人工授精は基本的に朝~午前中に行うのがよい。朝に産卵管が長くなったメスがいれば人工授精を行うことができます。なお、午後~夕方にかけてでも人工授精はできますが、夕方に近づくにつれて翌日に産卵するメスの産卵管が伸び始めるため、今日人工授精できる個体なのか明日できる個体なのかの判別が難しくなります。

人工授精を行う場合は、小さな入れ物に2日以上汲み置きした水を10~20ミリリットル(10~20cc)程度入れます。産卵管がよく伸びたメスのお腹を軽く押して卵を出します。軽く押して卵が出てこないのであれば、採卵には適していないため、無理に出そうとせずに別の日にやり直してください。卵を出し終えたら直ちに婚姻色のよく現れたオスのお腹を軽く押して受精させます。オスもメスも授精や採卵に時間がかかると死亡する場合があるため、素早く行う必要があります。受精後は軽く混ぜて全ての卵が受精するようにします。10分程度置いたあと、3回程度水を換えて卵を洗います。

その後、卵を管理するケースに移動させます。卵を管理するケースに移動させる場合、あらかじめケースに水を入れておき、その中に採卵用の小さな入れ物の水ごと卵を移動させるとよい。

卵と仔魚の管理

縦約20cm,横約30cm程度のケースに水を約1リットル入れます。この状態で卵を100個程度まで管理できます。ただし、卵の数は少ない方が好ましい。卵を管理する場所は暗所がよいため、箱の中に入れておくとよい。また、振動はないほうがよいため、人が通ったりドアの開閉などをしないような場所が好ましい。孵化までの期間は水温にもよるが2~3日程度である。

水換えは1日~数日に1回行えばよい。ケースの水を小さな入れ物ですくい取り、ケースに入っている水の半分以上を抜きます。その後、抜いた量だけ新しい水を足せばよい。水を足すとき、できるだけ静かに水を入れるようにします。また、死亡した個体はすぐに取り除くようにします。

なお、水は水温の変化を小さくするために、前日から親魚や卵を管理している場所に置いておきます。また、2日以上汲み置きした水を使います。

稚魚浮上期

稚魚は養分をほぼ全て吸収した段階で浮上し、泳ぎだします。浮上できる段階になれば、明るい場所に置きます。すると、浮上できる状態まで育った個体は水面近くを泳ぐようになります。最初は水面近くを泳いでいた稚魚は、しばらくすると中層を泳ぐようになり、このようになれば浮上は完了です。浮上が完了すれば、稚魚飼育用のケースに移動させます。詳細はシロヒレタビラの稚魚飼育方法をお読みください。

なお、孵化から浮上までの期間は、水温が高いほど短く、水温が低いほど長くなります。孵化から浮上までの期間は、採卵が4月下旬で約6週間,5月下旬で約1ヶ月,6月中旬で約3週間,7月上旬で2週間程度である。

関連項目