カブトムシの幼虫の飼育方法(飼い方)を解説します。飼育に必要なものや飼育の注意点,飼育環境,マットの交換について解説します。また、サナギと羽化後の成虫の扱い,人工蛹室,羽化不全についても解説します。
飼育場所は、直射日光が当たらず、30℃を超えない室内がよい。1階の涼しい場所で飼育するのが適しています。明暗はあまり関係なく、1日中暗い場所でも問題ありません。冬季は幼虫に冬であるとわかるように寒さを感じさせる必要があり、18℃程度以下の場所に置く必要があります。気温が0℃を下回らなければ寒さで死ぬことはまずないと考えてよいため、室内で飼育すれば基本的に寒さは問題になりません。
飼育ケースは、昆虫飼育用のプラスチックケースを使うのがお手軽かと思います。木の箱は幼虫が木を食い破るため使えません。水槽は幼虫の飼育に使えますが、水槽の角に使われているシリコン樹脂(シリコン接着剤)を幼虫がかじるため、幼虫を飼育した後の水槽に水を入れると水漏れが起きます。そのため、水を入れる予定がない水槽を使用するか、使用後に水を入れる場合は水槽用シリコンで補修する必要があります。なお、カブトムシの幼虫はかじることができる部分のシリコン樹脂は全てかじってしまうため、水槽の接着強度が低下する可能性が考えられます。そのため、水槽の底が抜けたりする可能性も否定できないため、幼虫の飼育に水槽を使用する場合はこれらに注意した上で使うようにしてください。
カブトムシの幼虫はクヌギマットや腐植土(腐葉土)を食べて育ちます。腐葉土は昆虫用の他に園芸用もありますが、園芸用の場合は、必ず石灰や殺虫剤(防虫剤)が入っていないことと、広葉樹の腐植土(腐葉土)であることを確認するようにしてください。当研究所では、園芸用ではなく昆虫用のものを使用することを推奨します。
これらのマットを水で湿らせて、飼育ケースに15cm以上入れます。マットを飼育ケースに入れるときは、そのまま入れるだけで問題ありません。飼育ケースにマットを固めに詰めたりする必要は特にありません。マットは軽く握って固まる程度に湿らせます。マットを強く握って水が出てくる場合は水分が多すぎである。また、マットをやや強く握っても固まらない場合は、水分不足である。なお、朽木をマットに埋めておくと食べますが、わざわざ入れる必要はなく、クワガタの産卵用に使って割り出しを行った後の朽木といったように使い道がない等、捨てる以外に用途がない朽木があれば入れておけばいいでしょう。大きな成虫を育てたい場合には、栄養価の高い発酵マットと呼ばれるマットを使う必要があります。
卵は産卵後10~14日程度で孵化して幼虫になります。産卵直後は直径2~3mm程度ですが、孵化が近づくにつれて大きくなり、直径3~4mm程度になります。また、白く細長かったものが黄色っぽく丸い形になります。
幼虫は多頭飼育が可能です。ただし、あまりにも1つのケースでたくさんの幼虫を飼育しすぎると幼虫が発育不良になる場合もあります。多数をまとめて飼育する場合は、数に応じて大きな飼育ケースが必要となります。
幼虫は孵化後1令幼虫となり、孵化後2週間ほどすると脱皮して2令幼虫になります。2令幼虫は2~3週間ほどで脱皮して3令幼虫となります。孵化後約1ヶ月で3令幼虫となっているのが普通である。ただし、栄養価の低いマットで飼育した場合は、もう少し期間が長くなる場合があります。
2令幼虫と3令幼虫はものすごい勢いでマットを食べ、大量に糞を出すようになります。糞が目立ってくると糞を除去し、減った分だけマットを追加すればよい。糞を除去するには園芸用の篩を使うとよい。めんどくさい場合は、糞だらけになった古いマットを捨てて、新しいマットを入れるという方法もありますが、マットの消費量が多いため、使える部分は使った方が経済的でいいでしょう。飼育ケースのサイズや1ケース当たりの飼育匹数にもよりますが、糞の除去は2~4週間に1回行えばよい。なお、糞の除去をしてしばらく経過している場合で幼虫がマットの上に出てきている場合は、ほぼ間違いなくマット内が糞だらけになっているため、糞の除去を行う必要があります。糞除去作業中は幼虫を別ケースに移動させておきます。作業が終われば、飼育ケースにマットを戻し、幼虫をマットの上に置きます。マットに幼虫を埋めなくても、自分でマットの中に潜っていきます。
冬になると越冬のため活動を停止し、エサもほとんど食べなくなります。特に、1月~2月においてはほとんど活動しなくなり、エサもほとんど食べなくなります。大きな成虫を育てるには、冬までにエサを大量に食べさせ大きな幼虫を育てることが必要である。糞が増えると、マットを食べられなくなり幼虫が成長しなくなるため、糞の除去を定期的に行う必要があります。また、栄養価の高いマットを与えるようにします。
冬季においてもカブトムシの幼虫は多少はエサを食べて糞をすることと、マットが乾燥してくることから、状況を見ながら糞の除去やマットを湿らす作業を行います。幼虫は寒さには比較的強く、気温が氷点下にならないような場所であれば寒さで死ぬことはまずありません。冬は暖房を使わない部屋で飼育します。また、急激な温度変化は幼虫にとって健康上よくありません。なお、孵化してから次の初夏まで気温が常に一定だと、幼虫は夏が来るということがわからなくなるため、サナギにならないということになる可能性があります。ある一定の寒さ(18℃程度以下)の気温を体験すると、その後に気温が上昇してくると春が来てさらに夏が来るということを幼虫は知っているため、気温が1年中一定だとこの判断ができなくなるからである。
春になると活動を再開してマットを食べるようになります。3月下旬~4月上旬くらいに1回掘り返して全ての幼虫を取り出します。これが最後の糞除去作業となります。このとき、飼育ケースに必ずマットを15cm以上入れる必要があります。幼虫はマット内でサナギになりますが、マットの深さが浅い場合はうまくサナギになれない場合があります。なお、マットは細かめのものを使用すると蛹室を作りやすいようである。
また、成長に極端に差がある場合は、小さいものは小さいものだけを集めて飼育したほうがよい。大きいものは大きいもの同士で飼育することで、同じケース内での蛹化や羽化の差があまり出なくなります。サナギになる時期に差が出ると、まだ幼虫のままの個体がすでにサナギになった個体を傷つけたりする可能性もあります。また、羽化の時期に差が出ると、成虫になった個体が活動を開始して、まだサナギの個体を傷つけたりする可能性もあります。傷ついたサナギはまず羽化することなく死亡という道をたどることになります。
3月下旬~4月上旬くらいに糞の除去を行った後は、サナギになる準備を始めている場合もあるため、基本的に掘り返したりはしないようにします。なお、この作業以降は基本的には掘り返したり糞の除去作業は行いませんが、ケースの側面から幼虫が活動しているのが見えるなど蛹室を作っている気配がない場合で、さらに糞が多くなってきている場合にはこれ以降の時期でもマット交換を行うとよいでしょう。
早い場合だと、4月下旬~5月中旬頃に幼虫はサナギになる準備を始めます。そのため、マットを掘り返したりしてはいけません。サナギになる時期が近づいてきた幼虫は、それまで白色や薄い黄色だった体色が黄色に近い色になります。幼虫は口から出した粘液や自分の出した糞を使って周りのマットを固めて蛹室という卵型の部屋をマット内に作ります。蛹室を作り始めると、強い振動を与えてはいけません。また霧吹きなどで水を加えることも控えたほうがいいでしょう。なお、蛹室の大きさは高さが最大で10cm程度になるため、昆虫マットを15cm以上入れておかないと、蛹室をうまく作ることができず、サナギになれない場合があります。なお、サナギになるために蛹室を作り始めた幼虫は、飼育ケースの底面を顎でひっかく場合があり、ガリガリという音がする場合があります。
蛹室が完成すると幼虫は前蛹という状態になります。前蛹は体が黄色くシワシワとなり、見たところ死んでるようにも見えますが、死んでないので注意するようにしてください。死んでいる場合は、体全体に斑点が出たり黒くなったりします。その後、前蛹は脱皮してサナギとなります。羽化が近づくと、脚や頭等が赤っぽくなってきます。
気温によって多少異なりますが、サナギは3~4週間ほどで羽化し成虫となります。羽化しているのがわかっても、すぐに取り出してはいけません。自分からマットの上に出てくるのを待つのが最もよいが、取り出す場合は羽化後最低数日がたってからがよい。いつ羽化したかがわからない場合は、成虫が自分でマットの上に出てくるまで待つのがよいでしょう。複数個体を1つの飼育ケースで飼育している場合は、羽化時期には個体差があるため、最初に羽化した個体が出たタイミングでは、他の個体はまだサナギである可能性もあります。そのため、羽化後もしばらくはそのままにしておき、羽化した個体を掘り出したりしないようにするほうがよいでしょう。
蛹室を壊してしまった場合は、人工的に蛹室を作るという方法を使います。湿らせたマットをケースに15cmほど入れ、その中にサナギよりも少し大きな穴を作り、崩れてこないように周りを固めます。あとはその中にサナギを入れれば完了です。日本のカブトムシは縦向き(ケース底面と垂直方向)にサナギになります。横向き(ケース底面と平行)にすると羽化不全になる原因となりますのでご注意ください。
羽化不全とは羽化に失敗した状態のことである。重症であればすぐに死亡するということもありますが、羽が正常に重なり合ってないなどの軽傷であれば正常に羽化した個体と変わりない生活を送ることが可能である。羽化不全は偶然になる場合と、蛹室が小さすぎる,蛹室が不完全であった場合などが考えられます。たくさん飼育していたり、長年飼育を続けていると羽化不全は避けて通れない道のようです。